沿岸と奥州の春祭り その二
- 遠林健一郎
- 2017年7月2日
- 読了時間: 6分
さて、陸前高田経由で奥州市に向かうとなると、住田町か大東町を通過する事になる。
一度陸前高田まで下ったのに、国道340号で北上して住田に戻っては、通る道が違うだけで、下った分だけ余計な負荷というもの。
今泉街道を使い、大東町を猿沢方面から国道456号で江刺区入りする予定で、車をとばす。
「大原水かけまつり」で有名な大原地区を抜け、摺沢にてラーメン屋で昼。
飯は食べれればいい。
今日は時間が惜しいし、夜もあるのでお腹をそれなりに満たせればいいだけのこと。
最安ラーメンをそそくさとすすり込んで、国道343号は猿沢地区へ左折。
バス停探訪&名前蒐集していた時に気にした、「分限城」と呼ばれる集落を通過(江刺側からだと、千葉商店を過ぎて国道397号がY字分岐している辺り)。
ここまでくれば、もう奥州。
国道456号へ右折し、一気に江刺の町中へ。
駐車場は某スーパーを拝借(笑)
どうせ買い物もするし。
駐車場では、日高ひぶせまつりで活躍した、厄年連の「飛龍陣」が演舞を始める。
地元の時のような演奏屋台は伴わず、録音音源での踊り。
アレンジされた「水沢あじゃら節」がかっこいいだけに、この音の割れは最高に残念だったな。
気分が高揚し始め、祭り会場に向かう足も早足になる。
もうかすかに、町内屋台のお囃子が聴こえてきている。
道中、職場の同僚に遭遇。
「行く」と言っていたから不思議ではなかったのだけど、彼のほうは「江刺藤原の郷」などで行われる、アニソンライブのほうがメインのお目当てだったらしく、初日の昨日から楽しんだらしい。
水木の兄貴に井上あずみ、森口博子って・・・ドンピシャ世代にはもうたまらないだろうね。
祭りのメイン広場である、大通り公園沿道までくると、もう人が集まり、町内屋台の披露が始まっていた。
去年は間に合わず、見れなかった町内屋台披露。
興味があるのは、屋台自体と言うよりかはそのお囃子だ。
統一したものがあるわけではないらしく、各町毎に違い、しかも他地域のお囃子を習い覚え演奏したりしているのだ。
どんなお囃子があり、どこがどんなお囃子を奏でるのか。
これは甚句踊りパレードが始まると、屋台がパレードカー化してしまうため確認できない。
全町屋台が江刺甚句の演奏になってしまう。
町内練り歩きとこの屋台披露時が、聴き比べできるタイミングであり、中でも全町屋台が1ヶ所に集って、1台ずつ披露していくこの時間は、聴き比べには非常に効率的で貴重な時間だ。
ちなみに、江刺の屋台は水沢のものよりひな壇部までの高さがなく、統一した衣装や化粧作法もない。
もっと言えば、ひな壇上になっていなかったり、屋台の形状からして根本的に違うものもある。
たぶん、奏でるお囃子の、元々の祭りや町の作法を参考にしているんだと思われるけど。

まずは六日町銭町組。
祇園ばやしと書かれたこの屋台は、衣装や化粧の作法も含めて、見事に花巻スタイル。
花巻囃子が、本家の祇園囃子の影響から生まれているらしいから(というか、私のイメージでは県下の盛岡南部風流山車系まつりのお囃子や、気仙地区式年祭以外の沿岸部のお囃子、これ以外は全て本家の祇園囃子の影響下のものだと思っている)、祇園ばやしを名乗るのも頷ける。

2番手は、黄色がトレードマークの南栄会。
「風流秋葉ばやし」をうたう。
これも何のことはない。
名称が違うだけで、「花巻ばやし」のそれだ。
花巻ばやしは吉原ばやし系の分類になるはずだし、花北地区ではそれらのお囃子を用い、火防の神"秋葉さん"を元とした火防祭が多く執り行われていることからしても、このネーミングは頷ける。

3番手は男石会。
"男"が入る独特の町名だからなのか、甚句踊りパレード時には、半被を脱いでさらし巻きのみの上半身で、男子も女子も叩く。
義理人情時代の東映任侠映画にでもいそうな、鉄火肌の祭り男、男勝り女の意識なのだろうか。
この時間はまだ露出していない。
お囃子は町名を冠した「男石ばやし」となっているけど、これも他地域のお囃子の借り物?
あっ、なんか聴き覚えあるなーと思ったら、気仙地域の「道中囃子」を早くした感じ。
「午前中も(大船渡で)聴いてきたやつじゃん」とか、少し笑ってしまった。
ただし、気仙地域のように、手踊りを前に伴うというのはないらしい。
内陸方面からなのか、沿岸方面からなのかは判断がつかないけど、北上の二子町にも道中囃子はあるようだし、江刺区伊手から気仙郡住田町への道路の接続を考えると、伝播してきたものとみていいのではと思う。

続いて、中町は「江刺ばやし」。
写真からだけでは分かりにくいかと思うけど、実はこれ「花輪ばやし」を奏でてたはず。
そう言われて見れば、三つ巴家紋の入った太鼓を正面に、手元に小太鼓を2つ並べる配置は、本家花輪のそれだ。
ただ、花輪人に独特の跳ねるような叩き方は、残念ながら見られなかった。

一親会は趣がガラリと変わる。
赤い提灯を四方に飾り巡らせ、これまでの突破風の屋根を備える、水沢風の屋台とはかなり異なる。
それもそのはず。
この一親会の提灯屋台は、福島県二本松市のそれに影響を受けているのだそうだ。
ちなみに、天高く突き出している部分は倒すことも可能。
お囃子は「ふるさとばやし」。
これについては、オリジナルなのか、はたまたどこかのものの拝借なのか、確認が取れなかった。
それこそ、屋台よろしくお囃子も二本松に倣っていたりするのかもしれない。

次は大通り組。
これも「江刺ばやし」と書かれているけど、"花輪ばやし伝承"をきっちりうたっている。
だからなのか、屋根部分の金の彫り物の豪華さといい、屋台全体の細身な印象、腰抜けでないながらも立位スタイルの太鼓、手踊りを先行させる(本家花輪では全町がするわけではないけど)など、かなり本家花輪を意識している印象。
ただやっぱ、花輪ばやしの音色は夏真っ只中に聴いてこそ、気分が高揚するのは否めない。
本家が断トツに素晴らしいのは、どんな祭りやイベントでもそうなんだろうから、決して大通り組さんを否定しているわけではない事だけはご了承を。

最後は川原町 ・本町組。
これも、突破風屋根を持つ水沢風屋台と趣を異にし、何となく社(やしろ)感が漂ってくる。
屋台の四方は、酒桶を2段重ねて並べ、ぐるっと囲んだようになっている。
ごめんなさい。
どんな感じのお囃子だったか忘れてしまった(笑)
けど、去年の甚句パレード時にやったら恰好良かったのだけは記憶している。
町名が入っているから町単位での屋台なんだろうけど、どっか創作太鼓団体のそれにちかい雰囲気を感じるのはなぜなんだろう?
続いて百鹿大群舞。
郷土芸能鹿踊り(ししおどり)の太鼓系の中でも、奥州市界隈の団体が集まり、"礼庭"の一斉披露である。

ここでは太鼓系鹿踊りの三大流派、春日流(花北中心) 、金津流(奥州市中心)、行山流(一関市、奥州市中心)のうち、奥州市に分布する、金津流と行山流が集う。
中でも、写真手前のササラが特徴的な団体は、去年から気にしていた。
鹿踊りのササラと言えば、後方に見られるような白くて長いものが一般的。
この団体(久田鹿踊りさん?)のササラは他より短く、茶褐色でかなりリアルだ。
本物の鳥とかの羽でも使っていそうだ。

礼庭が終了した。
鹿踊りも、団体毎にそれぞれのリズムやテンポの取り方があるらしいから(当然と言えば当然か)、通に言わせれば「三ヶ尻のが好きだね」とかあるらしい。
残念ながら、鹿踊りに関して私はまだそのレベルにまではいっていない。
続く。
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