春の栃木県遠征 その三
- 遠林健一郎
- 2017年5月24日
- 読了時間: 8分
間が空いてしまったけど、遠征3日目の模様を。
3日目は祭の2つ目、日光市の弥生祭へ向かう日。
前夜の飲み屋でのウツノミヤンのニーチャンは、「月曜にお祭り?」みたいなリアクションをしていたけれども、弥生祭は1200年近くも続いている伝統のお祭りらしいし、あまり観光祭り化されていない伝統的な祭礼行事ほど、曜日より日付(数字)に拘るもの。
数字にこそ意味があるわけで。
観客が来やすいように云々なんて、土日に祭りを合わせるようになったのも、何百年以上と続く祭の歴史から考えれば極々最近のことなのだ。
さて、この日は弥生祭の本祭日であり、日光二荒山神社に11台の花家体が繰り込む、午前11時頃が昼のピークタイムのよう。
そのため、あまりグズグズせずにホテルを出、すぐに日光線で乗車した。
通勤・帰宅時間でもない日光線というは、考えてみれば当然と言うべきか、乗客の8~9割は外人観光客である。
わずかに見受けた、老年のご夫婦がポツネンと座っていたのが印象深い。
頭のてっぺんからケツくらいまで長さのある、それこそ山岳用品専門店じゃないと買えんのじゃないかっていうようなバックパックを背負い、さらに両手にリュックサックを下げて車両を歩いて行く白人カップル。
こんなバックパッカー・スタイルも珍しくはない。
改めて、狩猟民族は鍛え方が違うなと痛感した。
日光に到着。
日光にも宇都宮と同じく、JR駅と東武駅の2駅がある。
この2駅は大して離れてはいないけど、東武日光前のほうが断然繁華だ。
観光バスや路線バスのバス停が立ち並び、タクシーも常駐、土産物屋からレストラン、喫茶店まで並んでいた。
その東部駅前を抜け、なぜか私はバスを使わず、しかも国道119号ではなく住宅街を抜けて行くという、変わった工程を経た。
バス停、外人が並びまくってたもんで。

住宅街を行くと、沿道に見事な桜が出現。
カメラを構える方も少なくなく。
日光の緩やかな上り坂は、3日目の私に地味に疲労を蓄積させる。
住宅街を左にそれ、国道119号と合流し、旅館や土産物屋、飲食店を横目に見ながらの緩やかに登っていく。
この辺は本当に店が多く、上・中・下の鉢石町と言うらしい。
名物の湯葉を使った丼がワンコインなんて喫茶店もあった。

少しすると、こんな橋が左手に見えるT字路にぶつかった。
「神橋(しんきょう)」とか言うらしく、左手側で料金を払って渡れるらしい(バスの見えている右側は封鎖されている)
「神の宿る橋」ということなのだろうか。
封鎖側にやたらと大業な事が書かれて、進入禁止と貼られていた記憶があった。
T字路の正面には、上り坂の階段が見えていたが、どうやらここからもう東照宮への参道らしい。
しかし、地味に疲労蓄積していて、東照宮が主目的でない私にとって、この急勾配は辛いものがある。
左に曲がって、道路(国道120号)に沿って歩くことにした。
左手に川を見ながらゆっくり国道を上っていると、駐車場や土産物店などがまた並び始めた。
安川町とかいう地区らしい。
コインロッカーなど、いかにも観光地だなというアイテムを横目に見ながら、大きな土産物店に挟まれた道に右折していく。
ここをまっすぐ行けばもうお祭りの震源地に着くはずだ。
そう体に言い聞かせ、綺麗な舗装路上っていくと、やっと左手に日光二荒山神社の鳥居が出現した。

後でGoogle Mapで検索し直してみたら、この行程は大体徒歩34分。
数字だけ見れば徒歩可能圏ではあるような気がするんだけど、「疲労の蓄積」と「坂が多い」という日光の地形も含んで、それ以上な印象で歩いていただろう。
二荒山神社境内は相当広く、もうたくさんの人でごった返していた。
11台の花家体もすでに整列している。
繰り込みには間に合わなかったようだ。

けれども、この景色は圧巻だった。
ピンクの花飾りをつけた花家体を背に、紋付き袴にシルクハットの明治?大正?スタイルが粋なおじさん。
袴姿で談笑する家体組のお父さんたち。
アマチュアカメラマンのおじさんや、バックパック背負った白人・黒人も入り乱れて、時代も人種も入り乱れた摩訶不思議アドベンチャー状態だった(笑)

何やらアナウンスがあり、神職さんが東照宮のほうへ横切っていく。

アナウンスは続き、様々な道具を持った人たち、神輿がさらに続いていく。
これだけでも相当な人数だ。

道具が横切って行くのを見守る、花家体の1台を正面から。

花家体を横から。
もう昼飯時だ。

少しして挨拶回りの時間が始まった。
各町家体から代表者が3人ほど出て行き、他町家体の代表者に挨拶して回る。
2人が挨拶、1人が見届け人的立ち位置とみた。
「下鉢石町から参りました!! 本日はおめでとうございます!!」
そう大声を上げると、懐から何やら封筒を出し、相手に手渡した。
「ご町内、御一党様にもよろしく!!」
挨拶をそう締めくくると、隣の他町家体に向かって歩く。
各町が全町を回って、入れ代わり立ち代わりの挨拶だった。

紫と青の2色に着飾ってシルクハットで決める、腕組みで粋に見守るおじさん。
このおじさんにこのスタイル、最高に合うな。
明治・大正期の文士とか、大店の主人とかがしそうなスタイルだ。
大体の挨拶を見たところで、昼飯時を過ぎかかっていたので、腹が減り始めていた。
二荒山神社境内を出、参道を下りながら、昼飯のイメージをしていた。
当てはあった。
一つは参道の入口付近で国道沿いにある、古めかしい大衆食堂。
食品サンプルが並べてあり、値段までは見ていなかったが価格的にも期待できそうだった。
もう一方は前述した湯葉丼500円の喫茶店。
ここは上ってきた国道を下らなければならない。
大衆食堂の前を通ってみるが、期待とは裏腹に安くはなかった。
メニューも値段のわりに好みのものがない・・・となると、俄然気になるのは日光名物が500円で食える喫茶だろう。
途中で食事兼民芸品店やら湯葉料理店やらも見かけたが、「湯葉丼500円」がなまじ頭に刷り込まれているために、「何のために下ってるんだ」「高づかみじゃあねぇ・・・」と変な拘りを発揮するのである。
まぁ、提灯を灯して運行される夜までは時間があり過ぎるから、日光の町中も楽しむという意味では良かったのだけど・・・。
下りも疲れる・・・。
ともかくも、目的の店に到着。
おばちゃんが1人メニューを携え出て来たので、迷わず「湯葉丼」と言い放った。
がしかし・・・
「今日はもう終わり」
言葉少なに、直球で返ってきた残酷なお知らせ。
限定メニューだったのかよ・・・と唖然とするばかりで、言葉も出ない。
まぁ確かに言われてみれば、個人店で地元名物がこのコスパの良さってのは、そういう結果になっても不思議ではない。
湯葉丼しか想定してなかった私に即答ができるはずもなく、目を凝らしてメニュー表との格闘が始まった。
しかし、何度も出しているようにそもそもここは喫茶店。
飲食メニューの層が厚い訳もなく、日光の名水で入れたコーヒーが並ぶばかりで、カレーと牛丼しか後はない・・・。
仕方なく、日光まで来て牛丼を食べる羽目に。
平皿にオシャレに盛られた牛丼を食らいながら、窓の外の日光の昼下がりに目をやる。
客は私しかいない。
傷心気味の私に何らフォローのないおばちゃん(笑)
観光客の多い町なんだから、もうちっとコミュニケーションとかあっても・・・。
「兄さん見ない人だね?どこから?観光?」とかさ・・・。
そんなこんな考えていると、外人4人組が来店した。
コーヒーでも飲みに来たらしい。
外人も極端だよなぁ。
バックパック背負ったガッツリ・マッスルもよく見るけど、その真逆でキングサイズのデブりも(苦笑)
まぁ、キングサイズのデブりなんて、十中八九かのお国のお人なんだろうけど・・・(名誉のために国名は伏せます)
腹ごしらえも済んだしどうするか。
また二荒山神社にすぐ戻っても、大きな動きはないだろう。
どうせバスを使えばいいし、ということで駅までの国道をさらに下ることにした。
東武日光駅前はバスターミナルや土産物店、飲食店が並んでいて、電車の時間調整にもいいだろうな、とか考えつつ、喫茶店に入ってみることにした。
日光は名水地だし、さっき喫茶店でコーヒー飲んでなかったし・・・。
ゆっくり座れるのもいい。
夜のことを考えながらコーヒーをすする。
ここまでの日程は天気に恵まれていたのだけど、この日の夜から翌朝までは雨の予報だった。
早々宇都宮に戻ってネカフェにこもるかも悩んだ。
結局、せっかく来てるんだし・・・と夜まで残る決断。
土産物店なども覗いた後、路線バスに乗り二荒山神社参道の入り口まで。
早い早い。
わざわざ、歩いたのがバカみたいだ(苦笑)
参道入り口の観光土産物店も物色し、職場への土産購入した後、また参道の坂を上り境内へ。

隣りの日光東照宮へと続く道の山門。
手前側に砂利道があり、日光東照宮正面へ出る。
花家体は移動を開始する直前だった。
整列しているけれども、なかなか動き出さない花家体。
「古式風格を重んじ、儀式作法を粛々と行う」と言われるお祭りだけあって、バカ騒ぎのような熱狂もないし、1つ1つの行動が非常にゆっくりだ。

やっと動き始め、山門をくぐる花家体。
いわゆる山車的な大きなものがくぐって通過できるほど、東照宮の周辺は鳥居も山門もいちいちデカい。

東照宮へと向かう花家体。

東照宮にお参り中。

東照宮への坂を下っていく花家体。
あとは ひたすら道なりに下って、町に出るだけはずだけど・・・。

少し先でまた止まってしまった。
雨もわずかにパラついてきた。
一度止まったらなかなか動かない。
そう読んでいた私は、先回りで下り、町のほうで待つことにした。
土産物店などを物色して待った。
雨の中、折り畳み傘も使いながらずっと待った。
また心は折れそうになったけど(笑)
天候のせいもあるのか、どうやら日程は押していたらしい。
ともかくも、ようやく花家体は下りてきた。

T字路を町に曲がっていく花家体。
やっときたか~。

雨という不幸は映り込みという幸運でもあった。
これは幻想的過ぎる。
ただ、残念なことに映り込みが入ったいい写真は撮れず・・・。

並んだ花家体。

雨にも負けず、賑やかな花家体。
町中の移動をある程度見た後、JR駅へと歩いて行く。
駅と神社を繋ぐ路線バスのルートがすっかりかぶっていたので、どこから乗れるかが運任せ状態でもあったから。
日光線は雨の中を宇都宮へ。
かくして、日光な、弥生な1日は終了した。
続く
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